基礎基本という言葉
盛岡市ピアノ教室「ミチコピアノアカデミー」
2021年8月10日のブログです。
みんな、ピアノが弾けるようになりたい、あるいは、今より少しでも上手くなりたいと思ってレッスンを受けようとするんですよね。
一応弾けるけれどもっと進歩したい、という意思をお持ちの大人の方にお話を伺うと、「曲が弾けるようになりたいというだけでなく、より深い表現ができるための技術を身に着けたい、基本から学びたい」という意味のことをおっしゃいます。
ピアノ演奏の基本とはなんでしょうか。
指が自由に動くようになるよう、五本の指を動かしていく、というイメージが一番多いかなあと想像します。間違いではないけれど、それだけをひたすらやっても、思うような表現にはなかなか結び付かないかもしれないので、細やかな注意を払って様々な練習を積む方が、結果、早道だと思います。
演奏表現に必要な技術って、ほんとうにたくさんあり、特に「ピアノ」という楽器を扱うための方法というか、「どのようにすればどのような音が出るのか」という部分はとても大切なところだと思います。
こればかりは、口で説明するだけでは不十分で、実際に先生が違いを見せてあげなければわからないことだと思います。
よく、強弱をつけて、といいますけれども、ピアノというのは、単純な強弱以前に、音のふくらみがあるかないか、音の方向とか、音の表情(つまり様々な響きのこと)、そういったものが出せることが大事なのだ、というようなことを知った上で勉強できたら、どんなに学びが楽しくなるかと思います。私はそのことを知れただけでも本当に幸せだと思っており、コツコツ練習しながら、自分の音と向き合っています。少なくとも、昨年から見たら、全然違ってきました。(これは、毎年同じことを思います)こんな風にかわってこれたのは、「基礎基本」を習いに通ったおかげだと思います。一人でどんなに情報を集めても無理だったと思います。
人は、やっぱり人からしか学べません。
かつて、音の表情や方向、響きの種類、などは、強弱のその先のさらに上級にあるものだ、という意識を長い間もっていましたから、結局、ピアノ演奏は、どこかの時点で行き止まりになってしまうイメージがありました。でもそれはちがいます。そうでなければ、この世で本当に才能ある一握りの人しか演奏の深みを追求できないということになってしまいます。そんな不平等なことはなく、ピアノの演奏は、今のじぶんに合ったレベルで、様々に追求しながら進歩していけるものなんです。
のぞむものは人それぞれですが、たとえばどんなにやさしい曲でも、自分の心、誰かの心に自然にしみわたるような音色で演奏できたら、または、自分にとってこれまで難しいと思っていた曲を、無駄のない技術で、良くコントロールしながら、押しつけがましくないのに印象に残るような演奏ができたら、幸せではありませんか。
基礎基本という言葉の中身について、教える側は、慎重に分析して生徒さまにつたえなくてはなりませんね。どんなに指が動くようになっても、たいした表現にまでつながらない場合だってあります。一つの音、二つの音、に、しっかりじっくり目と耳を向けることの意味がわかれば、基本の意味するものは、その人の中で、おのずと変わってくると思います。私自身がそうであるように。(技術の基本は、その先生によって、多少違う面もあるかと思います。私自身は、自分が使っていた過去の技術の基本、現在使っている技術の基本、どちらもお伝えしています(自分のわかる限りにおいて)。そうすることで、少しでも、生徒さまの視野が広がるきっかけになれば、うれしいことです。)
・・・また、別にそこまで指が回らなくても美しい演奏はできます。ピアノは、指を動かすことだけでどうにかなるというような単純なものではないから、面白いのです。(指が回る、ということと、コントロールすることは別物だと今強く感じます。あくまで指は先端についていて鍵盤に触れる部分であるというだけです)
あるお菓子作りのかたが「基準は今の自分の味。それを少しでも超えられるようやり続ける。終わりはない。」とおっしゃっていました。何事も同じですね。