先生に期待するもの
盛岡市ピアノ教室「ミチコピアノアカデミー」
2023年1月21日のブログです
これは、自分が教わる立場になった時のことを考えてみればはっきりわかります。
突破口を示してほしい。そして、今足りないことの核心に迫ってほしい、ということです。
逆を言えば、理想の状態を提示されて、そこまでの道のりは自分で努力してください、では、ほとんど意味がないです。
・・・もっと深い音が出せたらいいな、でもできない、と、もがいているときに「もっと深い音色で表現しましょう」などと言われたところで、やっぱりそうですよね……という気持ちになるだけだし「もっとたっぷり歌いましょう」と言われたところで、そもそも楽器を歌わせる、歌うってどうやるんですか、というところから始まる。
表面的な指摘というのは、こういっては何ですが、自分より上手い人に対してでもできると思います。人の演奏に突っ込むことなどいくらでもできるから。なぜかというと、そもそも演奏、音楽、芸術なんて、正解などないし、完璧すぎる演奏に対して「もっとリラックスした雰囲気が必要な場面がありますね」とか「音が単一ですね」とか、ましてや表現に関しては、一人一人感じ方も違うわけですから、どうとでもいえますし、言うこと自体は悪いことでもない。
ただ、先生は、感想を言うにしても、常に意図を持った発言でなければならないと思います。根底に、その生徒さんの今良いところを認め、未来を応援するという気持ち!
そして、謙虚で正直であること。
自分がこれまで積み上げてきたもの、今出せる音、努力していること、などをちゃんとわかって、生徒さんの上からではなく、横に並んで、必要な突破口をさがしてあげられること。少なくともその努力をすることかなと思います。
先生自身が突破していないことは、示してあげられません。ショパンエチュードを弾けない状態で、ショパンエチュードの本当のアドバイスをするのは不可能です。ただもちろん、生徒さんに才能があって、自分自身で突破口を見つけて進んでいく、ということもあるでしょうが、だとしても、それを見抜くためには、そして、弾けていてもまずいところの根本原因を見抜くためには、やはり先生自身が突破していないことは無理です。もっと軽やかに弾きましょう、なんていうのは、指導ではありません。そのためにはどうしたらいいか、を、生徒は知りたいのですから。
上級になって急に突破できないことが出てくるのは、根本的に見直さなければならないことがある、というサインだったりもします。こここそが、先生のほんとうの出番なんですよね。
ショパンエチュードというのは一つの指標だと思っていて、思えば15年以上前から、これらを弾きこなせるのが先生として必要なラインだ、と信じて、じわじわやってきました。思えばずいぶんレッスンも受けてきました。
まだまだ先は長いですが、現在の奏法と出会ってから、同じ場所にとどまることはなくなりました。確実に前進するって、実はあるレベルを超えると、難しいことになってきます。しかし、良い方法を知ると、ちゃんと前進していける。このことを感じるようになっていくと、練習がどんどん楽しいものになっていくのは当然です。
もし長生きできるとして、80歳、90歳になった時、その人の人生で最高のバッハ、シューベルトなどが弾けたらいいですね。私はぼんやりとそんなことをイメージしています。健康でさえいれば、普通に可能だと思います。ちゃんとピアノ人生を積み重ねてさえいれば。
突破口をたくさん示していただけるレッスンを受けてこれたこと、大事に育てていきたいと思います。今年は演奏も頑張ります。